2021年09月15日

アトピー性皮膚炎の革命的な新治療:JAK阻害薬

 JAK阻害内服薬がついに開業医で使えるようになりました。
 この薬は細胞内の免疫活性化シグナル伝達に重要な役割を果たすJAKファミリーに対する阻害作用を示し、免疫反応の過剰な活性化を抑制することでADを改善する内服製剤です。
 これまでも注射薬で処方できるものもありましたが、月2回の通院または自己注射をしなければならず患者様の負担がありました。今回のは内服薬なので、そういった負担がなくなります。
 処方はある程度(定められた基準があります)重症な場合のみに限られ、また、3割負担で月2〜4万円(医療費の助成制度が受けられれば半額ほどになります)かかりますが、かなりの効果があります。年齢は12歳から使用できます。
 私は開業前にアトピー性皮膚炎の免疫療法の研究(A, B)と皮膚バリア機能の研究(C, D)を行っておりました。それらを糧にして、当院のアトピー性皮膚炎の治療ではバリア機能の保護を最優先し、外用ステロイドを極力少量に抑える事ができるようにしています。
 この方法である程度のアトピー性皮膚炎は最終的に外用ステロイドを使用しないで良い状態を保つ事が出来ております。
 しかし、ある程度以上の重症な場合、バリア保護や強いステロイドを外用しても、抗アレルギー剤を投与しても効きません。これは皮膚の炎症が強く、かつ長期に遷延するためで、シクロスポリンなどの免疫抑制剤を使用しないと改善する事は困難でした。
 JAK阻害薬はこの免疫抑制剤に相当する強力な抗炎症作用がある薬で、かつバリア機能をも回復させる効果があります。副作用的には免疫抑制剤より安全性は高いです。
 投与前には内科的に肺結核や肝炎ウイルスの感染がないことを確認してから投与を開始しなければなりませんが、当院は内科(私も内科出身の皮膚科医)を併設していますので、当院で検査が可能です。
 すでに数人に投与を始めていますが、投与開始して翌日から掻痒(かゆみ)が軽減し、1週目から皮膚症状が改善し、これまでに経験したことがないほど楽に生活ができるようになっています(いわゆるクオリティオブライフの著明な改善)。大量に使用していた外用ステロイドを終了できた患者様もいらっしゃいます。
 大学病院時代にいろいろな治療を試み上手く行かなかった経験から、この内服JAK阻害剤の出現は、「このような治療が理想だった」と思わせる革命的な新治療です。これが契機となり、今後のアトピー性皮膚炎の治療はさらに進歩してゆくと考えられます。

参照
(A) J Am Acad Dermato 2000 Feb; 42(2 Pt 1) 258-62
(B) Clin Exp Dermatol 2002 May; 27(3): 225-9
(C) Skin Res Technol 2001 Feb; 7 (1): 36-9
(D) Skin Res Technol 2003 Feb; 9 (1): 31-3
posted by 院長 at 18:22| 日記