当院ではLED照射機器を2年前に導入し、様々な治療効果が認められましたので、論文を執筆して報告しました。LED治療は非常に有用であるにもかかわらず、大学病院を含め利用している施設は多くありません。安全であることは間違いありませんが、これまで有用性について疑問視されていたのがその原因と考えられます。しかし、実際にはLED治療は秀逸な治療方法なのです。
今回は、3つの論文の内容等についてブログで紹介します。
一つは難治性ニキビに対する効果を記載した論文です。LED治療は10年ほど前からニキビ治療に用いられています。主に、青色LEDの殺菌作用によりにきび菌を減少させてニキビを改善させる、という治療でした。最近になり、赤色LEDには皮脂腺の分泌を抑制し、ニキビの炎症を抑制する効果が報告され、赤外線LEDにも動物実験でニキビ様皮膚炎の炎症を改善する事が報告されました。
当院では青、赤、赤外線の3種LEDを組み合わせて同時照射し、外用剤、内服薬だけでは改善しない難治性ニキビに使用し、効果が得られています。

LMDF(顔面播種状粟粒性狼瘡)という顔に生じる難治性の皮膚疾患があります。半世紀以上に提唱された疾患ですが、いまだに定まった治療法が見つかっていません。LMDFは毛包脂腺から数mmサイズの肉芽腫が発生し顔にブツブツを形成します。この炎症には腫瘍壊死因子(TNF)が関与している事が最近報告されましたが、赤色と赤外線のLEDにはTNFを攻撃する効果があります。また、毛包に存在するにきび菌の関与も報告されています。当院では青の殺菌効果、赤と赤外線の抗TNF効果を期待して3色同時照射を行い効果がありましたので、論文として報告しました。

最後は酒さに対するLED治療の論文報告です。ニキビは若い人の80%が罹患する一般的疾患ですが、酒さも6%ほどに認められる比較的頻度の多い皮膚疾患で、確定的な治療がありません。いろいろ試されていますが、それぞれ有効率が低いのです。酒さの炎症には3つの分子が係わっていて3色のLEDを照射するとこの3つとも抑制される事が解かっています。何故、これまでに酒さにLED治療が行われていなかったのかが不思議で、この論文を提出するにあたっては審査の先生がなかなか信じてくれず、納得してもらうまでが大変でした。ただ、赤外線は昔から酒さを悪化させる事が言われていますので、当院では青と赤色の2色で治療を行っています。現在、約80%ほどの有効率が得られています。酒さは非常に光や活性酸素に敏感なので、過剰のLED照射では悪化しますので、加減が非常に重要です。